CROSSROADS×Nagasaki  -クロスロード×長崎-

異国文化が交差した長崎を科学と情熱で探究

「ガリヴァー旅行記」に長崎が出てくるの、知ってました? イギリス編 外伝(1)

ガリヴァー旅行記。
ガリヴァ旅行記

日本人なら誰しも小学生までに読んだことのある絵本であり、最もよく知られた物語のひとつでしょう。

ただ、この文芸作品は、全部を読んだ人でないと気づかないことがたくさん出てきます。

実在の国をガリヴァーは訪れています。それが「日本」。

で、何と、「ナガサキ」が登場するのです!


ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説によれば、ガリヴァー旅行記はこうなっています。

ガリバー旅行記
Travels into Several Remote Nations of the World..., by Lemuel Gulliver; Gulliver's Travels

イギリスの作家ジョナサン・スウィフトの風刺物語。 1726年刊。4部に分れ、第1部ではガリバーが漂着した小人国リリパットについて語り、小さいくせにいばりくさっている皇帝や国内の騒動を通してイギリスの政党対立を風刺する。第2部は巨人国ブロブディンナグ、第3部は空飛ぶ島ラピュータの物語。後者では、当時盛んであった自然科学研究の行過ぎや思弁にふける学者への風刺がある。作者の感情がいちばん激しく表わされていると思われる第4部では、理性的生物の馬フィナムに対比して、不潔で悪臭を放つ最下等の獣ヤフーが人間を表わし、作者の徹底的な人間嫌悪を示している。しかし、フィナムは理性万能の精神を表わすものとして、ヤフーと同様に風刺の対象になっているとも思われる。深刻な人間風刺として、また楽しい冒険的旅行記として、子供にもおとなにも愛読される、近代小説史の発端を飾る特異な作品である。



絵本で読んだ人は、小人の国:リリッパットの話だけしか知らないのではないでしょうか?

小人とは真逆の巨人の国に行って「お前、めっちゃ肌キレイやん!」と、ガリヴァーは可愛がられたりもします。
また、馬が人間(ここでは「ヤフー」と呼ばれてます)を家畜にしている国もあります。ある意味「猿の惑星」を彷彿とさせますね。

そして、第3部の「空飛ぶ鳥ラピュータ」から着想を得て、宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」が創られました。
ラピュタ

ナガサキ」が登場するのは次のようなくだりです。少し長めですが引用してみましょう。

「私は遠い遠い世界の果で難船したオランダの商人ですが、それからとにかく、どうにかラグナグ国までやって来ました。それからさらに船に乗って、今この日本にやって来たところです。つまり,日本とオランダとは貿易をしていることを知っていたので、その便をかりて私はヨーロッパへ帰りたいと思っているのです。そんな次第ですから、どうか、ナンガサク(長崎)まで無事に送りとどけていただきたいのです。」
 と答えてやりました。それから私はつけ加えて、
「それから、もう一つお願いがございます。どうか、あの十字架踏みの儀式だけは、私にはかんべんしていただきたいのです。私は貿易のため日本へ来たのではなく、ただ、たまたま災難からこの国へたどりついたのですから。」
 と、お願いしました。
 ところが、これを陛下に通訳が申し上げると、陛下はちょっと驚いた様子でした。それから、こう言われました。
「オランダ人で踏絵をしたがらないのは、その方がはじめてなのだ。してみると、その方はほんとうにオランダ人かどうか怪しくなってくる。これはどうもほんとうのクリスト信者ではないかと思えるのだがなあ。」
 しかし、とにかく、私の願いは許されることになりました。役人たちは、私が踏絵をしなくても、黙って知らない顔をしているように命令されました。
 ちょうどそのとき、ナンガサクまで行く一隊があったので、その指揮官に、私を無事にナンガサクまでつれて行くよう、命令されました。
 一七〇九年六月九日、長い旅のあげく、ようやくナンガサクに着きました。私はすぐそこで、『アンポニア号』という船の、オランダ人の水夫たちと知り合いになりました。前に私はオランダに長らくいたことがあるので、オランダ語はらくに話せます。私は船長に、船賃はいくらでも出すから、オランダまで乗せて行ってほしいと頼みました。船長は、私が医者の心得があるのを知ると、では途中、船医の仕事をしてくれるなら、船賃は半分でいいと言いました。
 船に乗る前には、踏絵の儀式をしなければならないのでしたが、役人たちは、私だけ見のがしてくれました。
 さて、今度の航海では別に変ったことも起りませんでした。四月十日に船は無事アムステルダムに着きました。私はここから、さらに小さい船に乗って、イギリスに向いました」



…と、こんな感じです。

1709年という年に長崎へ、あの「ガリヴァー」がやって来ていたのです。みなさん、知ってました?

18世紀前半の設定で「踏絵」も話が出てきます

筆者のスウィフトの生涯は、1667年11月30~1745年10月19日なんで、77歳まで生きましたから、当時としては結構な長生きですね。
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ジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)■イングランド系アイルランド人の諷刺作家・随筆家

この「ガリヴァー旅行記」からは、当時の強烈な政治風刺が読み取れます

文芸作品だから、歴史的な価値はない、とする意見もありますが、そんなことはありません。
実はコレ、かなり貴重な資料となっているのです。

「フィクション(いわゆる小説)は事実を描くものではない。真実を描くものである」

これが世界文芸の常識です。文筆の力でこの世に現れていない真実を炙り出すという。

これに対して、日本の小説事情は特殊でした。

いつかこのブログでも明治にさかのぼって話をすることがあるとは思いますが、純文学が広まった日本では、「小説は事実を描くものである」という観念が広がっていきます。
尾崎紅葉が没したことを契機に、自然主義文学が隆盛していき、世界の小説にはない「私小説」という、自然主義文学から派生した流れが押し寄せてくるのです。田山花袋の「蒲団」がその始まりでした。

このような意外なところに、ひっそりと歴史の真実が転がっているのかもしれませんね

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