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出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 18 - 寄り道イギリス編(4) -

ウィリアム・アダムスはオランダのロッテルダムから東アジアへ向けての航海士として(誰かから)雇われています
そして、弟トマスと共に、5隻の船団でアジアへ向けて出港しました。

リーフデ号2
デ・リーフデ号と仲間たち
ちなみに、リーフデ号はこの船団の右下です。
ホープ号を旗艦として、リーフデ号・ヘローフ号・トラウ号・フライデ・ボートスハップ号の5隻です。しかし、この中でロッテルダムに帰還できたのは、太平洋にも到達できなかったヘローフ号だけでした。

この時、アダムスには妻とまだ小さな二人の子供がいましたが、この遠くてとても危険なアジア行を、なぜか優先させています(伏線1)。

詳細は以前書いたので避けますが、日本でのいわゆる「リーフデ号事件」で、あれほどイエズス会士が、「こいつらは我々の敵:プロテスタント国の船だから、乗組員をぶっ殺せ!」と家康に進言したにもかかわらず、逆にこの得体のしれないプロテスタントの紅毛人を重用したというのは、やはり不可思議です。

アダムスの技術供与などもあったでしょうが、のちに250石取りの旗本に取り立て、帯刀を許し、更には相模国逸見に采地も与えています。
どう考えても家康の気持ちが測りかねるというか・・・
定説に縛られず、より論理性の強い理由が必要であろうと思います

一体、リーフデ号1隻に何が積まれていたのでしょうか?

その時調べられた「積荷目録」をざっと見ておきましょう。

◆毛織物
◆ガラス玉少々
◆青銅の大型大砲19門
◆小型大砲数門
◆銃500挺
◆鉄製砲弾5000発
◆鏈弾300発
◆火薬2500㎏

◆鋼鉄製の胴と胸当て…などなど。

コレ、国立国会図書館にある、リーフデ号を調べた、オランダやイギリスの敵国のカトリック宣教師が書いた記録です。

「こいつら…日本を征服して、ここに住み着くつもりかっ?」とも。

これが、予め戦乱の世:日本の情報を得ていたエリザベス1世からの交易品、もしくは今後イギリスが貿易独占をするためのお試しプレゼントだったとすれば、そして、アダムスがこれらを無償で提供して大喜びされたとすれば、ある重要な意味を持ってきます

家康は大坂城にいたのですが、情報を得た後すぐに行って積荷を調べてくるよう命じます。
この時の積荷で、特に家康の目を惹いたのが、この「鋼鉄製の胴と胸当て」だったのです

ここでデ・リーフデ号がいわゆる「漂着」した日を西暦で確認しましょう。

1600年4月29日

ん? 1600年?・・・・・・・・・







まぁ、この頃までには殺傷能力の高い様々な種類の銃が使われていたのです。だから、銃弾に対する防備は生死に関わるので常に重要です。ただ、従来の日本の甲冑は機動力は高いですが、防弾を防ぐことがあまりできませんでした

直江兼続の甲冑
直江兼続 愛の甲冑

これに対し、西洋の騎士が身に着けている甲冑はどうでしょう。

全身を覆うプレートアーマー 1540年
プレートアーマー 1540年

日本の地形は複雑なので戦場では、より機能性の高さが求められますが、西洋の甲冑は丈夫だけど逆に重すぎて動けません。重量は高度な軽量化技術を使ったものでも最低20kg、重いものでは40kg以上あったらしいです。しかも超ムレますΣ(゚д゚|||)

日本人はここでもアイデアを炸裂させてます

この二つの利点を兼ね備えた甲冑を即座に開発しているのです。

それが、家康専用「南蛮胴具足」↓
南蛮胴具足 家康用
引用:和歌山市の文化財・遺跡 南蛮胴具足(徳川家康所用)

この合戦の様子を記した「関ヶ原御一戦記」という書物があります。
ここに、家康が「南蛮甲冑を着けて出陣した」という文が出てきます。この時の甲冑が和歌山県立博物館に残されているものです。

しかも、よく見ると分かりますが、弾痕が10か所あります。これは強度を測るための試し撃ちの跡だと言われています。家康の慎重な性格がよくわかりますね。鳴くまで待とう、なんとやら。
更に、鉄製の特殊なヘルメットで頭も守る。

つまりコレ、日本にかつてなかった「防弾チョッキ」の役割を果たすものなのです。そして、胴の中央とヘルメットは「しのぎ」と呼ばれる凸構造になっていて、これが物理的に弾丸を外方向へそらすように工夫が施されています

この甲冑の存在は一部の人間を除いて、そのすぐ後の戦いまで秘蔵されていますけどね…一部を除いては(近未来への伏線2.)。

つくづくと、日本人の高度なモノづくりへの飽くなき魂は、このような所でも感じられます

これがウィリアム・アダムスの重用とどうかかわってゆくのか。

そして、イギリスとは?オランダとは?

それは次回、お楽しみに~!

dejima_agin_rogo-3.png

<オランダ編>
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 1
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 2
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 3
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 4
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 5
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 5.5 ―科学と非科学の違いー
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 6
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 7
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 8
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 9 - アントウェルペン編(1) -
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 10 - オランダ独立(1) -
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 11 - オランダ独立(2) -
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 12 - オランダ独立(3) -
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 13 - オランダ独立(4) -
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 14 - 寄り道イギリス編(1) -
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 15 - 寄り道イギリス編(2) -
「ガリヴァー旅行記」に長崎が出てくるの、知ってました? イギリス編 外伝(1)
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 16 - アジアへ(1) -
出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 17 - 寄り道イギリス編(3) -

<宗教改革編>
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 1 - 宗教改革(1) -」
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 2 - 宗教改革(2) -」
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 3 - 宗教改革(3) -」
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 4 - 宗教改革(4)前編最終回 -」

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出島表門橋開通記念! みんなで学ぼう、オランダ 17 - 寄り道イギリス編(3) -

実は、オランダ東インド会社より2年前の1600年、イギリスが先に東インド会社を設立しています。
これもインドネシアにある香辛料を求めて設立されたものです。ジャワ島やインドに拠点を置いて、香辛料の獲得に乗り出しました。
エリザベス1世の時代です。

Elizabeth_I_(Armada_Portrait).jpg
1588年頃のエリザベス1世 無敵艦隊を倒してご満悦のご様子の図

しかし、この時期を考えてみると、このインドネシア辺りにはポルトガルを併合したスペインとオランダがいて、行けばこいつらと競合することになります

オランダは前回書いたように、毛織物の販売でスペインが大陸から持ってきた金・銀がしこたまあるので、交易に有利なのですが、イギリスはまだ大国ではなく、基本、民間交易を行うには毛織物以外の交換財があまり見当たりません。
当然、金・銀がなければアジアとの交易が出来ません。

アメリカ大陸にはスペインが幅を利かせていて、イギリスがアルマダの海戦で勝利したとはいえ、まだまだ世界では太刀打ちできません。また、航海術やコネクションの洗練度がスペインにはかなう訳がありません。

さて。

これまでの、この一連のブログを読んできていただいたみなさんが、もし当時のイギリス国王ならどう考えますか?

ボクなら必ず日本へ行きます。倫理観を抜きにすればですが…。

まず、日本には当時は銀が山ほどあるからです。日本との交易さえ成功すれば、つまり、日本の情勢を見ると日本製の武器より良質な武器を輸出できれば銀がゲット出来ることは分かっているからです。ヨーロッパは戦争ばっかりやってますから、ある意味武器の質は良いに決まってます。

日本の情報は南蛮貿易で交易を行っていたスペイン・ポルトガルなどから、確実にヨーロッパへもたらされていて、航海のリスクか富かを秤にかけて一攫千金を狙う、という当時はハイリスク&ハイリターンのビジネスだったでしょう。
ポルトガルは種子島に鉄砲売ってますし(※「鉄砲を伝えたのはポルトガル人ではない!? 1」シリーズ参照)、日本は戦国時代真っ最中です…。つまり、良い武器に対する需要はかなりある、と考えられます

以前、「ヴェニスの商人」の話、少し書きました。(※「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 4 - 宗教改革(4)前編最終回 -」参照)
ま、いちお簡単にあらすじを書くと、
主人公のアントニオは、友人バサーニオから富豪の娘ポーシャと結婚する資金を融通してくれるようお願いされますが、彼の財産は航海中の船に積まれているため貸すことができません。そこで、期日までに返済されなければ彼の肉1ポンド(約450g)を与えるという無茶な条件を飲んで、大嫌いなユダヤ人の金貸し:シャイロックから金を借ります。ところが、船は難破し全財産を失います。
結局返せなくて、裁判官に化けたポーシャに命を助けてもらいましたけどね。
ただ、そうしてでもハイリスクの船の貿易というのは儲かるビジネスではあります。

これはイタリアの話ですが、全く同時期のストーリーです。

だからこそ、およそこの時代の交易はリスクヘッジ(危険を避けること)のために「船団」を組んで出かけていました
こんな感じで↓
LiefdeShip.jpg

というのは、複数の船と航海士で船団を構成することで、一度により多くの交易品を積載して航海を進めることが出来るし、もし海戦になったとしても、戦いをより有利に進めるなど多くの利点があります。また、仮に何隻かが沈没して、一隻しか戻れなくも、アジアの香辛料貿易はリスクを上回る利益が発生するのです

とにかく、アジアに行きさえすれば莫大な利益が発生する可能性があり、そこから日本に行って売買が成立する良い商品さえあれば、当時は銀が交換で得られます。

けれど、アジア貿易に関しては、イギリスは他の国からはずっと遅れた参入なのです orz

エリザベス1世はこうした状況を打破するために、スペインが幅を利かせている新大陸アメリカを避け、銀が獲得できる可能性の高い日本との交易が最重要だと考えたのではないか?・・・

ここで、エリザベスの視点で、ボクの勝手な推論をストーリー仕立てで書いてみました。
お題は「泪橋を逆に渡る」です。

◆エリザベス:「どうやらスペイン・ポルトガルのカトリックの連中が、日本人を奴隷として売りとばしたおかげで、「伴天連追放令」とやらで追い出されようとしてるみたいね。でも、私たちはキリスト教でもプロテスタントだし、こっちでカトリックとケンカしているしね。敵の敵は味方よ。きっと日本人もそう思うわ。でも、さすがに手ぶらじゃ無理よね~。あちらの王様にお土産が必要ね。何がイイかしら…日本人が今一番欲しそうなモノ」

●家臣1:「陛下、日本はいま戦国の世らしいですが・・・」

◆エリザベス:「あら、それならウチで作っている良い武器があるじゃない!『この武器で、あなたたち日本人が嫌いなスペインの無敵艦隊てやつを、この前ウチがこれでやっつけましたのよ、ホホホ』みたいな宣伝が出来そうよ。アレなら結構な利益が出るわね。武器って今ウチの在庫に何がある?」

●家臣2:「鉄砲と大砲はかなり。それに鉄砲の弾をはじく甲冑なんかどうでしょうか?」

◆エリザベス:「いい考えだわ。じゃあ決まりね。それにどうやらプロテスタントの国はまだ日本とは交易していないみたいね。出来ればウチが一番乗りで独占契約しておきたいわ。…でも、どうやって日本まで行けばいいの?誰か行き方知っている人、いないの?」

●家臣3:「陛下、それなら私めに良い案があります。水先案内人として慣れているとはいえ、さすがに敵のカトリック国の連中は無理です。けれど、同じプロテスタントでスペインから独立宣言したばかりですが、案内人はオランダから探すのはどうでしょうか?あいつら、まだ日本までではないですが、最近インドネシアまで香辛料を取りに行っているようです。奴らなら金次第できっと引き受けてくれるハズです。ドーバー海峡を挟んでウチとも結構近いし、すぐに連絡が取れますので、以前あなた様が袖になさり続けてたフェリペ様に気付かれないよう、密偵を放ちます。フェリペ様はもう70を超えられて耄碌されているとか噂です。そして、オランダから出航したとすれば、誰もイングランドの交易のためだとは気付きますまい。さすれば日本と交易独占交渉も秘密裏に行えます。そうそう、アルマダの海戦の時に見つけた、ウチの若いので、腕利きの航海士がおります。オランダ人とも仲がいいと聞いてます。たしか、名はアダムスだったかと…こいつを探しにすぐに誰か遣わしましょう」

●家臣1:「これで女王様がヨーロッパとアジアを、奴ら(スペイン)に代わって手中に収める日も近いですな」

◆エリザベス:「よく言ったわ!ではすぐに支度を」

◎一同:「ははーっ」

・・・・と。

でもコレ、あながち推論ではないかもしれないことを示す資料が、国立国会図書館に残ってました。ロンドンの大英図書館にも。と、日光東照宮にも。

次回、お楽しみに~!

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<宗教改革編>
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 1 - 宗教改革(1) -」
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 2 - 宗教改革(2) -」
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 3 - 宗教改革(3) -」
「みんなで学ぼう、世界史としてのキリスト教 4 - 宗教改革(4)前編最終回 -」

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