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CROSSROADS×Nagasaki  -クロスロード×長崎-

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西郷隆盛 (5)-斉彬閣下の007 -

さて、先頃の大河ドラマで、月照さんと入水自殺を試みるも救出されて奄美大島へ流される形となった西郷さんでした。「愛加那」さんと結婚し、子どもを二人授かります。
愛加那さんは絵画が残っていますね。
愛加那
愛加那


その時の子で、長子を西郷菊次郎といい、後の京都市長などを歴任します。また、娘の菊草(きくそう)は西郷さんのいとこで、大山巌の弟:大山誠之助の妻となりました。ちなみに、大山巌はこの話でしたね(※西郷隆盛 (1)-幕末哀戦士-

この奄美大島編から、やや時間をさかのぼって、殿様の島津斉彬(なりあきら)公の工作活動をしていた時期を見ておきましょう。

ちょうどペリーが浦賀に来航した頃、斉彬に取り立てられて「御庭方」という役目を担います。あまり地位は高くないのですが秘書のような役目で、幕府の八代将軍吉宗が創設した「御庭番」を模倣し、斉彬が新たに作った役職。それが「御庭方」でした。ここで西郷さんは斉彬の近くに控えていて、なかなか自由に動けない藩主である斉彬に代って、幕府の実力者や有力大名、公家の所へ出入りして人脈を作っていくのです。

大河ドラマでもありましたが、一見出世したかに見えて、途方もなく江戸では金がかかるのです。現代でも人脈を作っていくのに、取引外での接待や贈答など、経費で落ちないことも進んで行わないと密な情報は得られないのと同様です。また、ドラマではほぼ語られていなかったようですが、京都や大坂では女遊びもしていたようで、祇園のお気に入りの仲居がいました。あだ名が「豚姫」(笑)。歌舞伎の「西郷と豚姫」として残っていますね。一説には京都祇園の茶屋「奈良富」の仲居をしていた「お虎」という人だということです。ドラマでは芸人の近藤春菜さんが演じていた人がそうでしょう。
西郷と豚姫
西郷と豚姫

そんなあだ名つけるなんて女性に失礼じゃないか、と怒る人もいるでしょうが、本人もそう呼ばれて喜んでいた、という話も残っています。今と違って男女ともふくよかな人が評価されるという側面もあるので。ただ、西郷さんがデブ専だったかどうか、というとそれもよくわかりませんが、勝海舟が「氷川清話」の中で「京都に、西郷隆盛に愛された『豚姫』というふくよかな女性がいた」、「たかが女遊び一つとっても、西郷はたいしたもんだよ。何か見た目じゃないところで惹かれあったんだろうね」とは言っているし、人物本位で人との付き合いをしていたのでは、とボクは思っています。

一方で薩摩では、新婚なのにすぐ単身赴任し、父と母が相次いで亡くなり、新妻のスガとの生活二年で破綻してしまいます。家父長制の下でのスガの生活は苦労が絶えなかったであろうと推測されます。夫が単身赴任で全然家にいないのに、つい先日まで他人だった西郷家という大家族の家事をほぼ一人で切り盛りしなければならない。それなのに、夫は仕事の一環とはいえ派手で奔放な浪費生活をしていることが耐えられなかったのかもしれません。

ただ、この時期の人脈作りとしては後の展開において、大変重要な人物らと知り合いになっていきます。松平春嶽(しゅんがく)の懐刀で優秀な橋本左内、水戸藩の改革派で西郷さんが大変心酔した藤田東湖、そして薩摩の錦江湾へ共に入水した月照さんなどですが、この時の人脈作りの妙が西郷さんの真骨頂とも言えるものでした。先ほどの「豚姫」との付き合いが人物本位であろうと思ったのは、この事例があるからです。

一般に人は自分と気が合って、一緒にいて心地よい人との付き合いを求めるでしょう。その方が楽だし、まるで違う考えの人とはケンカになるに決まってます。しかし、西郷さんは、当時の「尊王攘夷派」とも「開国佐幕派」とも分け隔てなく、その人物の度量を見極めながら交流を深め、これが後の明治に至るまでの財産となっていくのです。

この人脈作りは、もちろん斉彬公の下での情報収集活動を行いやすくするためということが優先していたでしょうが、これが現代で「インンテリジェンス」と呼ばれるものの基礎をなしています。映画の007のように殺しや裏切りや錯綜し、美女が解決のカギを握っている、などいうのはまずありえないでしょう。ま、美女系で言うと、かつて分かりやすいチャイナのハニートラップに楽々引っかかってしまった首相もいましたが、確か、はしも…
はしも・・・
えと、はしも・・・


とにかく、西郷さんらが行っていたのは、異なる身分や立場を巡る水面下での非常に地道な活動です。

果たして、これまでのみなさんの「幕末」イメージはどんなものでしょうか?

尊王攘夷派がとにかく外国人を毛嫌いしていて、至る所で徒党を組んでテロ活動を行っており、それに輪をかけて凶暴な連中らと刀で切り合いをしている、という殺伐としたものではないでしょうか?それってまさに「坂本龍馬」や「新撰組」などのイメージです。

けれども、幕末の実際の政治においては、そのような表に出ている暴力的な手段で下っ端連中が権力を掌握するという所まではいけません。幕末最強の佐賀鍋島藩は、むしろ国内の殺し合いをしないために努力していたので、最後の最後あたりまで佐幕でした。

今の我々民主主義社会と違って身分制社会である上に、権力者は血縁関係者であって、選挙で選ばれるということは皆無です。しかも、その上には天皇がいらっしゃいます。権力を握ろうにも高貴な武家に生まれついていないならそもそも即アウトです。だからといって権力者が常に権力を自由に使えるという訳にはいきません。そこで、諜報活動を盛んにして、様々な人達への根回しを十分に行い、権力を行使しやすくしておく場を予め作っておくことが必要となる訳です。

だからこそ、あまねく権力を行使するには異なる身分や立場、思想をも超えて、有能で話せる人間とのつながりが意味を持ってくるのです。

既存のイメージとは随分かけ離れていますが、若かりし頃の西郷さんはそのような諜報活動のエキスパートでした。

さあ、大河ドラマでも奄美大島編が終了して、薩摩へと戻ってきそうです。そして、いよいよ動乱の世の幕開けです。

では、次回もお楽しみに―!

西郷隆盛 (1)-幕末哀戦士-
西郷隆盛 (2)-薩長同盟:坂本龍馬ファンタジーを打ち砕く 1-
西郷隆盛 (3)-薩長同盟:坂本龍馬ファンタジーを打ち砕く 2-
西郷隆盛 (4)-かる~く、グラバーとは -

テーマ:歴史大好き! - ジャンル:学問・文化・芸術

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