CROSSROADS×Nagasaki  -クロスロード×長崎-

異国文化が交差した長崎を科学と情熱で探究

「肥前の妖怪」 鍋島直正 2

さて、鍋島直正公の2回目です。
今回より数回は世界史的な視点を入れて考察を加えていきます。


1853年、ペリー艦隊が浦賀を訪れた時、実は鍋島直正公はこれを打ち払うよう意見を述べている。

夷狄共 倨傲之振舞 難差摑
大意:異国共の傲慢な振る舞いは差し置きがたい。
「鍋島直正公伝」

ところが、この言葉に反して、世間に「攘夷論」が後に高まった際には次のようにも言っている。

攘夷ハ不得手ニテ甚ダ迷惑
大意:私にとってはこの攘夷という風潮は本当に苦手なことであって、迷惑なことである。 
「続再夢記事」

これら相矛盾した言葉でわかるように、この当時の直正公の真意は量り難いのである。その真意は・・・後にわかる。

ここで視点を変えて、日本を取り巻く当時の世界情勢を見ておく。

1853年、アメリカ合衆国がペリー艦隊を日本に派遣したのは、ホイッグ党のフィルモア大統領の時である。ペリーはフィルモアの国書を持参して江戸幕府に迫り、翌1854年、「日米和親条約」を締結し開国を実現させた。この時、ペリーは出島三学者のひとり、シーボルトの日本に関する書籍を熟読していて、最近の調査によってペリー進軍の前に、シーボルトが日本を軍事侵攻しないようにという手紙を送っていた事実があった。これまで散々アメリカの友好的な船団を砲撃し、アメリカ人に死傷者まで出していた江戸幕府の政策は蒸気船という最強の軍事力に対して屈することになったのである。

perry the illustrated london news oct 22 1853
<The illustrated London News Oct 22 1853>

日米和親条約原本
<日米和親条約原本>

また、いわゆる「鎖国」政策を続ける日本に対し、世界の国々にとっても200年以上もの長い通商関係を続けているオランダが日本との仲介役になって、こうした極端な保護貿易主義を改善してくれないだろうかという期待もあった。

そして、日本にとっても重要な転機であるはずだったのである。それが、イギリスのウィリアム・グラッドストン(後に自由党首相)らを中心に「不義の戦争」とする批判もあった、チャイナで発生したアヘン戦争(1840~1842年)。この戦争を始めるよう、イギリスでロビー活動をしていたのがあのグラバーも関連する「ジャーディン・マセソン商会」である。

世界は蒸気船の発明によって、いわば「第二次大航海時代」へと突入している。さかのぼると、アメリカのロバート・フルトンは、外輪式蒸気船「クラーモント号」を開発し、1807年8月17日にハドソン川で乗客を乗せた試運転に成功していた(※発明に関しては諸説あるが、ここでは通説のフルトンの発明としておく)。

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<外輪式蒸気船:クラーモント号>

徳川家康の時代以来、海からの防衛は楽だった。帆船の時代だったからである。そこで家康や国内の街道を整備し、国内の適切な個所に譜代大名らを配置、そして甲板のある船の建造を禁止した。つまり、海からの攻撃は敵にとっても容易ではないので、陸からの江戸攻撃さえしのげると幕府は安泰であったということを家康は熟知していたのである。この地政学観点からの家康の政策は情勢を鑑みた素晴らしいものである。

ただ、ここには条件がある。「海からは容易に攻撃されない」、というものだ。逆に海から攻撃が容易になると、あっという間に江戸は破壊されてしまうのである。それを可能にしたのが、「蒸気船」なのであった。

このような世界の海上交通革命が進む中、日本だけが無理を通せば、帝国主義を推し進めるイギリスなどの西欧諸国にチャイナ同様確実にやられてしまう。こうした情勢をシーボルトは知っていたのだ。だからこそシーボルトは、国外追放処分となってオランダに戻ると、国王ウィレム二世に日本に開国を勧告すべきだという旨を説いた。もちろん日本に残してきた妻子に会いたいという個人的な願望もあったであろう。しかし、日本で生活し、江戸参府を行って日本の調査を行ううちに、当時の日本の、海外に対する軍事的防衛の脆弱さに気づいていたということだ。

この進言を受け入れたオランダ国王ウィレム二世は、日本の開国を手助けすべく、シーボルト起草による開国勧告を、江戸幕府への正使を派遣して送ったのであった。

King_Willem_II.jpg

次回は気になるこの開国勧告の中身が、どのようなものであったか?というところから続けます。


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