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「ポルトガル人はなぜ日本に来たの?」に答えられますか? 5 最終回 ‐グローバリズムの落とし穴‐

今、日本の語学系大学のHPを見ると、ほとんどが「グローバル化」を唱えています。やたらとこのグローバリズムが素晴らしいと喧伝してまわる学校教師(特に文系)もいます。

今回は、このグローバリズムの正体をこの「スペイン・ポルトガル関連」カテゴリーにおいて暴こうと思います。
では、行きましょう!


ところで、「アメリカ」という名前はいつから呼ばれるようになったのだろうか?
1501年からの航海報告で、「ここはアジアではない」と言ったフィレンツェ人がいる。名を「アメリゴ・ヴェスプッチ」という。彼は天文・地理に精通しており、4回にわたって探検を行って、このいわゆる「新大陸」をアジアではないと確認したのである。

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アメリゴ・ヴェスプッチ
<DATA>
■Amerigo Vespucci
■1454年3月9日~ 1512年2月22日
■出身:フィレンツェ、イタリア
■セビリア、スペインにて活躍

しかし、この段階ではまだ北アメリカと南アメリカがパナマ辺りで陸続きになっていることは分からなかった。ヨーロッパからアジアに向けて船で出港しても、結局は南アメリカの下をかなり迂回するルートで行くことになり、インド航路よりも非効率であるが、この迂回ルートを始めて通ったのが、初めて世界周航を成し遂げた、として歴史に登場するマゼランである。

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フェルディナンド・マゼラン
<DATA>
■Ferdinand Magellan
■1480年頃~1521年4月27日
■探検家、航海者

マゼランはポルトガルの航海者で、彼もまたスペイン王カルロス1世の援助を受けてセビリャを280人で出航した。そして、南アメリカ南端に水路を発見する。ここは断崖絶壁と暗礁が多くて、潮流ももちろん速く、航海の難所である。ここを1520年10月にマゼラン一行が無事通過し、ようやく太平洋横断に向かうのである。

この海峡を「マゼラン海峡」という。
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<引用:消滅した航路標識

マゼランは太平洋に到達し、ここを「平和な海」と名付けた。これが「太平洋:Pacific Ocean」の語源となった。マゼランは100日を越える航海で太平洋を横断し、1521年に今のフィリピン諸島に到達する。しかし、セブ島の対岸にあるマクタン島で首長ラプラプとの戦いが起こってマゼランは殺されてしまう。この後、マゼランの部下(1隻の船と18名)が目的の一つであったモルッカ諸島(香料諸島)を経て、1522年にパロスに到着し、これでトスカネリが唱えた地球球体説も実証されたのである。

ちなみに、フィリピンとは援助したカルロス1世の皇太子:フェリペから名付けられた。このフェリペが後に父カルロス1世からアメリカ大陸などの広大な領土を継承し、あのオスマン・トルコ帝国をレパントの海戦で撃破、ポルトガルの併合など行ってスペイン絶対王政の最盛期を現出した。こうしてスペインを「太陽の没まぬ国」にするのである。「太陽の沈まぬ国」とは、このフェリペが地球表面上至る所に植民地を領有し、世界最大の植民地帝国を形成したので、その土地の必ずどこかに太陽が出ていたことを意味する。

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フェリペ2世
<DATA>
■Felipe II
■1527年5月21日~1598年9月13日
■ハプスブルク家のカスティリャ王国・アラゴン王国の国王(在位:1556年 - 1598年)
■1580年から、フィリペ1世(Filipe I)としてポルトガル国王も兼ねた。

16世紀から17世紀半ばの160年間ほどで、ヨーロッパの銀の保有量の3倍の量がアメリカ大陸からヨーロッパに運び込まれる。この金や銀を使用して、スペイン・ポルトガルは軍事力を強化していく。つまりこれが、前回の冒頭に述べた金・銀の保有量が国力を決めるという考え方「重金主義」なのである。コロンブスに始まるアメリカ大陸からのこの収奪によって、大量にもたらされた金・銀を香料諸島に持っていき、それを香辛料の支払いに充てたのである

ん? と、ここで、
スペインやポルトガルは、なぜ香料諸島のスパイスを武力で収奪しなかったのか?という疑問がわくだろう。

実はアジア圏においては、「ポルトガル人はなぜ日本に来たの?」に答えられますか? 1」で述べたように、既にスパイスの交易が古くから広く行われていて、さすがに彼らもここのスパイスを武力で奪うことが出来なかったのだ。そこで、はるばるアジアまで来て、自分たちだけが金・銀を流出させるだけでなく、自分たちの持つ武器の販売などを通じてアジアでも香辛料を購入するための金・銀の獲得を目指した。

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<青いラインが「スパイスの道」>

もちろん、この時代に交易で金や銀を支払うことが出来る国は限られる。

それが、日本。

ポルトガル人が種子島に「偶然」やって来て、鉄砲を置いて行ったのではない、ということを以前ブログで書いた(「鉄砲を伝えたのはポルトガル人ではない!? 1」)。この真意がここで更に良く理解出来るはずだ。

これが初期のグローバリズムだ。

国家の枠を超えて、手段を問わずに、とにかく自分たちだけ儲けられるだけ儲かってやろうというものである。鉄砲を売りに来たポルトガルが、日本には交易品が少ないので、たくさんあった金・銀、そして「人」を交易品の代価として設定したということだ。初めにキリスト教が広まった九州の人たちが大量に、そして世界中に売られていったこと(一説には50万人と言われる。総人口が2000万人程度の時代に、である)は、まさにグローバリズムの手法そのものである。世界中の文献に日本人奴隷の話が登場するのである。

このように立体的に考えると、なぜスペインやポルトガルが日本にやって来たのかも納得出来ると思う。豊臣秀吉や江戸幕府がキリシタンを弾圧したから酷い奴らだという、一面的な見方では真相がつかめないどころか、善悪の価値観すら逆転してしまう。

現代に即して言えば、グローバリズムとはEU、アメリカの前オバマ政権、日本の小泉政権がそれである。ただし、そこには必ず経済格差の増大や、国内の失業者が増加することをを正当化するための方便が必要となる「それは地球のため」、「人権を守る」、とかね。今のCO2排出による地球温暖化問題、石油から原子力へのエネルギー転換、過剰なまでの英語教育など、科学的に様々な立場がある論議なのに、これらは全てグローバル化を推し進める勢力によって進められている方便なのである。

先般のアメリカ大統領選挙において、オバマ大統領の後を継ぐヒラリー・クリントンがグローバリズム継続を唱え、ドナルド・トランプが「アメリカ・ファースト」の保護貿易主義を唱えた。エスタブリッシュメントと言われる権力者は、ほとんどがグローバリズム側で、CNNなどのメディアが盛んにトランプを、あることないこと非難しまくっていたのは、まさにこうしたメディアがエスタブリッシュメントの代弁者と化してしまっているかが良く分かった事例だった。日本のメディアもCNNなどから情報を仕入れて、ワイドショーにまでトランプの悪をフェイク・ニュースとして言いまくっていた。しかし、これを日本で唯一科学的に、冷静に見抜いていたのが国際問題アナリストで、拓殖大学客員教授の藤井厳喜先生だった。そしてその予見通りに、前政権下でのグローバル路線の悪を認識したアメリカ国民がドナルド・トランプを大統領にしたのである。


さて、今回のシリーズでボクが言いたかったことは、もちろんキリスト教の悪を弾劾するということではなく、スペインやポルトガルが現代の感覚からしてもいかに危険な交易を行っていたか、ということを知ってもらうためというものですが、今の教育業界ではこのグローバル化という言葉を無条件に良いものと捉える傾向に異を唱えたかったから、ということもあります。

数年前に小論文を教えていて、こうした話になったことがあり、とてもショッキングだったことがあるのです。
高校入試問題の英語長文で、「外国人に道で話しかけられたがうまく英語で案内できず恥ずかしい思いをした。だからもっと英語を勉強しようと思った」という趣旨の文章を頻繁に見かけます。

これこそまさにグローバリズムの落とし穴です。

逆に考えてみましょう。日本人がアメリカに行って日本語で話しかける、しかしアメリカ人は日本語を話せない、だからその人は恥ずかしい思いをした、・・・となるでしょうか?もちろんなるはずがない。しかも、生徒に「君、英語話せる?」と聞いても、「いや、話せません」と言う。自己紹介して、と言えば出来るし、これはペンです、とも言えるし、どうやら完全に話すことが「話せること」だと勘違いしています。英語に対する劣等感は甚だしく、それなのに教師は文法や単語ばかりやらせて、ホントにアホかと思ってしまいます。
・・・と、これほど力説しても、その公立高校3年生女子はこう言い放ったのです。
「いえ、話せなくて恥ずかしいです」
こういうことで、真の対等な関係で国際交流が進むはずがない、ボクは暗澹たる思いを経験しました。

みなさんはどう思いますか?

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「ポルトガル人はなぜ日本に来たの?」に答えられますか? 1
「ポルトガル人はなぜ日本に来たの?」に答えられますか? 2
「ポルトガル人はなぜ日本に来たの?」に答えられますか? 3
「ポルトガル人はなぜ日本に来たの?」に答えられますか? 4
 

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